表と瓜

「表 (一般男性)」と「裏 (同性愛者)」のシンドローム 。

「お元気で」の果て

僕には付き合って4年と10カ月の相方がいた。
いまも付き合っているかどうかは不明である。
でも別れたことになっても、付き合っていることになっても
今でも両思いである。

彼は僕の初めての相方で、
こっちの世界で初めて出会った人。
だから特別な存在で大切な存在。

僕が、北海道から関東へ異動することになってしまったがために
離れ離れになってしまうのだ。


北海道から関東に移住する前の、
最後のデートをしてきた。

「ここのシュークリーム美味しかったね」
「ここで写真いっぱい撮ったよねー」
「そういえばあそこ行けなかったねー」

4年と10カ月と言う年月の間に、たくさんの思い出を作った。
だから、最後の総まとめ的な話をするたびに泣きそうだった。
かといってこれからの話をすると、もっと泣きそうだったから、
これからの話は極力避けていた。


幼稚園の卒園式、
小学校の卒業式、
中学校の卒業式、
高校の卒業式、
大学の卒業式、
大学院の卒業式。

部活動の追いコン、
サークルの追いコン、
バイトの追いコン。

これまで様々な別れを繰り返してきたけれど、
別れ際が今までで一番辛かった。
これまでは見送る側だったから。
見送られる側の気持ちがわかっていなかった。

人生初めての相方とのお別れ。
なんでこんなに辛いのか。

僕が道外に出ていくことなんて付き合った当初からわかっていた。
だから、これまで「ずっと」「一生」「永遠」とかいう言葉を避けて会話していた。
数年のお付き合いだと覚悟もしていた。
なのに、なのに、相方への愛情が芽生えすぎて生半可な覚悟では足りていなかったのだ。


別れ際「お元気で」と言われた。
僕も「○○さんもお元気で」
と言って車を降りたけど、降りた瞬間に大粒の涙が溢れ出していた。

1カ月後に北海道に戻ってきて会う約束しているから
「またね」「じゃあね」
とかいう普段通りの挨拶されると思っていたのに
「お元気で」はずるい。
もう会わないみたいじゃないか。

これからも何度だって北海道に帰ってくるし、
逆に関東にも遊びに来てくれればいつだって会える。
これからも付き合っていようが付き合っていまいが何度だって会いたい。


僕たちは別れることになっているのか。

「つきあっているのか」「彼氏なのか」ということは今はもうわからない。
確かに僕たちは3年前までは”つきあって”いた。
○○年○月○日にちゃんと告白した。「大好きです。」
でもその時は「つきあってください」とは言っていなかったのだ。
数ヶ月後、相方に「僕たちって付き合ってる?」って聞いたら
相方は「出会った日から付き合ってると思っていた」との返事。
告白はされていなかったけど、恋人同然の会話をしていたし頻繁にデートをしていた。
確かに、「I LOVE YOU」「ちゅっ」とハートが溢れるラインスタンプを送られていた。
僕は告白するまではそれ系のスタンプは封じていたけれど。
だから出会った瞬間から付き合ったことになっている。
お互い公認。ロマンチック。


だから、
いつからか、「出会って〇〇年記念」ばかりに着目するようになって。
いつからか、相方感が薄れて。
いつからか、毎日ラインを送らなくなった。
いつからか、今日は無理して会わなくてもいいかと思うようになった。

でも、今はもっと会っておけばよかった、毎日ラインしていろんな話をしたかった、と心の底から思う。
最後のデートをする前より確実に相手のことを好きになってしまった。
いつでも会えない、ということが僕の相方への愛情を成長させた。


家まで送ってくれた最後にブレーキランプ5回点滅してくれていたらしい。粋な計らい。
だけど、残念ながら僕は涙で見えていなかった。(角度的な問題もあったかも)

だから、もう一度、もう一度、あの瞬間に戻れるなら、目にブレーキランプを焼き付けたい。

何度でも、何度でも、何度でも、立ち上がって言うよ。
「今でも君が大好きだ。」